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賽は投げられた。
それから、今送信したドキュメントを印刷する。
出てきた書類は結構な厚さになった。それを茶封筒に入れる。
朝一番で送付するつもりだった。
***
その日の夕方、ケイコから電話があった。
電話の向こうの声はひどく興奮している。
「聞いた? GEC。今、上から下まで蜂の巣をつついたような騒ぎよ」
「ケイコの耳にも入ってるんだ」
「粉飾決算のカラクリが詳細にわかるようになってたからね。
うすうす危ないんじゃないか、って思ってた連中もこれほどとは、って驚いてる。
どうもね、……タレコミがあったらしいよ。
詳細な資料が添えられているから、絶対内部告発者だろう、って。
どうやって粉飾したか手に取るようにわかるし、絶対逃れられないだろう、って、すごい噂になってるよ。
もちろん査察も入るって」
それからケイコは声を潜めた。
「……アンタ、知ってたの?」
どう答えたらいいのか迷う。
タレコミをしたのは自分だと言ってしまうか?
「その話についてはノーコメントでお願いします」
「……」
ケイコは電話の向こうで黙り込んだ。
余程長い沈黙が続いた後。
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