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あれほどの企業であったのに、崩壊する時は案外あっけなかった。
査察の審査が入るにつれて、さらなる改ざん、粉飾が次々と明るみに出てくる。
それまで赤字部門の事業部を切り売りして再出発をする、と経営陣は説明していたが、蓋を開けてみれば、赤字でない部門などなく、事業を売ろうにも買い手が名乗りあげることもないような事態であった。
さらに、全容が明らかになるにつれて、逮捕者まで出てきた。
京香の驚いたことに、秋山も逮捕されたのである。
特別背任罪ーー
経営陣ではなかったのに、刑事責任を負うことになったのは、
事実上、秋山が粉飾決算のスキームの陣頭指揮をとっていたことが明らかになったためだった。
復讐と言うには京香にとってあまりにも後味の悪い結果となった。
GECも、秋山も再起不能ではなかろうか。
京香は複雑な気持ちだ。
もしも、京香が秋山のあの資料を送らなければ、GECは今まで同様に会社が存続していたに違いない。
もちろん、経営者の責任が問われることは大前提だが、そこで働く従業員は何の罪もないのに、いきなり職を失ってしまうかもしれないのだ。
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