それぞれの道

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 粉飾などせずとも、着実に利益をあげることのできる企業でいるための努力。  当たり前のことだが、昨今のテクノロジーの進化、社会情勢の変化の速さ、またその影響の大きさを思い浮かべればそれは言うほど簡単なことではない。  カネもモノも人も国境を超えて自由に動き回るこの時代に、先を読み取って会社の舵取りをしていくことの難しさ。  リーマンショックが起きるまで、アメリカの国内で起きているサブプライムローンの焦げつきが巡りめぐって、近所にある昔ながらの老舗和菓子屋が倒産する結果を生むなど誰が予想できただろう。  が、しかし、そういうことが起き得るのが昨今のボーダーレス時代の現実なのだ。 「もし、五十嵐さんが、タレコミをしたことに罪悪感を感じているならば、今後、そのような企業が出てこないように、しっかりとコンサルティングをして下さいよ?  それが、あなたの使命なんじゃないですか?」  佐々木の言葉に京香はハッとした。 ーーそうだ。  打ちひしがれている場合ではない。  なんとも苦いこの経験を生かさねくては。 ーー私だからこそできることが何かあるはずだ。
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