それぞれの道

16/25

570人が本棚に入れています
本棚に追加
/401ページ
 エリカは結衣に自己紹介した。  結衣は不機嫌な表情を隠さずに尖った声で答えた。 「……聞いてると思うけど、京香から。私、バツイチで子供もいるんだよねー。  それに、最近、仕事も始めたし、時間取れるかもわかんないんだけど。  第一、男と付き合うなんて……」 「仕事!? アンタも就職決まったの?」  京香が目を見開いて結衣に聞き返した。 「まあね」 「えーー何、やってるの? 事務?」 「いや、実は求人広告の営業。もーー事務の仕事はぜんっぜん決まらなくて。  で、まあ、アンタも言ってたことだし、しょうがないから営業も考えるかーーって冷やかしで応募したら、トントン拍子に決まっちゃって、これが」 「どう? 仕事は」 「大変だよ。……知らない会社に飛び込みとかするし。  歩き回って足はパンパン。  でも、意外と合ってるのかもね。ホラ、私みたいな美人を無下にできる男っていないじゃない? 結構話聞いてくれるのよ、これが」 「アンタも自分で言うか? もうちょっと謙虚になりなさいよー」  京香は呆れた。 ーーったく、この二人は、結局似た者同士なのかしらん。   それとも、美人と言うのは得てして上から目線になるものなのだろうか?  京香は二人の顔をしみじみと見比べた。
/401ページ

最初のコメントを投稿しよう!

570人が本棚に入れています
本棚に追加