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不思議だった。
良太と一緒なら何があっても何とかなりそうな気がしてくる。
京香は、部屋で一人泣いていた時に、ふわりと抱きしめてくれた良太の感触を思い出していた。
あの時、京香はどんなに慰められたことか。
立ち上がる時に、自分を応援してくれる人が隣りにいるというのは、なんと心強いことか。
今、自分が良太を支えてあげることができるのが、京香は嬉しい。
「だけどさ、ボクが辞めちゃったら、店長はすっごく困ると思うんだよねーー。
おとといもさ、仕事がきつくて、バイトが一人辞めちゃってさ。
だから、ボクにもっと仕事して欲しいんだと思うんだよね、店長」
良太は、困ったような顔になった。
「良太! アンタね、そうやって『親切』にするのは結構だけどねー、それで自分が倒れてちゃ、意味ないよ!
大体ねー、勝手に結衣の子どもの世話したり、ここのご老人たちの面倒みまくったり、何のトクにもなんないんだし、少しは自分のこと、考えなきゃダメじゃん!
今だって、働くの大嫌いなクセに、ここの家賃払うためにガンガンバイトして、倒れたら元も子もないでしょうが!
その上、正社員になったら、こき使われまくっちゃうよ!?
そんなねぇ、ボロ雑巾みたいに働かせるなんてねぇーー」
言っているうちに京香は自分でもわけのわからない感情の渦にのみこまれていた。
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