使えない男

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そうだった……いきなり、結衣の弟が現れて、結婚するとか何とかかなり強引に転がりこんできたのだった。 一々気が利かなくて、相手にするのも注意するのも面倒になって、泊まらせた。   ……今朝こそは追い出さねば、とふと時計を眺めて、京香は慌てた。 ーーもうこんな時間!? あと10分で出勤の時間。 良太を追い出すどころじゃない。洗面所で顔を洗い、歯磨きをして慌てて着替える。 それからキッチンにかけこんだ。 「あー……もう起きたのー?」 隣りのリビングに敷いた布団の中からもぞもぞしながら良太が声をかけてくる。 「出勤の時間!」 京香はそれだけ言うと、冷蔵庫から牛乳を取り出して喉に流し込んだ。 その後、慌てて化粧をしに洗面所に駆け込む。 支度を整えた後、リビングに戻ってくると、良太はまだだらしなく布団にもぐりこんだままだった。 何やってんの!早く起きて布団を片付けなさいよッ!……と一発怒鳴りたいところだが、そんな時間はない。 「帰って来るまでに出て行ってね。鍵は……」 ここで少し思案した。渡さなければ、良太は外には出られない。 しかし、昨日の今日会ったばかりのヤツに鍵を渡すのは(いくら身元がわかっているとはいえ)不用心だ。
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