出戻り女の癇癪

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一方で、仕事まっしぐらの友だちもいた。 財務省に入省したケイコは、午前様になることなんてザラだ。 「……結婚とか考えてないの?」 京香が聞くと、ケイコはビールをぐびぐびと飲みながら答える。 入省して3年。 オヤジくささはすっかり板についたようだった。 「縁があればねぇ……。でも、今は仕事が面白いし、大事だし」 まあ、そりゃ、そうよね、と京香も頷かざるを得ない。 財務省のキャリアでいづれ国家予算を決めるような仕事をしていれば、そりゃ、面白いし、やりがいもあるだろうと京香も思う。 それに、何のかんのいっても国家公務員は身分も待遇も保証されている。数年前に国家公務員の給与が高すぎると問題になって少し給与が減額されたが、それもいつの間にか元に戻ってた、という話だ。 東大卒の頭の回るお役人たちが、国の税金を使って自分たちの給料を決めるのだから、まあ、安いままにしておくはずがない。 はっきりいって彼らの仕事は業績なんて全く関係ない。 適当にのらりくらりやっていてもつぶれる心配やクビになる心配はまずない。 民間のメーカーに就職した京香にしてみれば、この辺はちょっと失敗したのかな……なんて思うところだ。
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