572人が本棚に入れています
本棚に追加
「それに、ヘンな男に捕まって苦労するぐらいなら、一人の方がよっぽど気楽だし楽しいじゃない」
全く結婚は眼中にないようだった。
「えー?ケイコってそういうタイプだったっけ?」
驚いて京香が聞き返すと、ケイコはふんと鼻を鳴らした。
「何、言ってるのよ。私が、何の為に国家公務員になったと思ってるのよ」
「そりゃ、日本の国を良くするためでしょ。公僕として社会に貢献したいんでしょ」
「……マジか。そんなこと考えてる官僚なんて誰一人いないっつーの。
安定してるし、給料も悪くないし、特に、女にとってはこれ以上待遇のいい仕事なかなかないわよぉ。
言われたことをきちんとやってたらクビにはなんないし、外に対してはエラソーな態度取れるし、このご時世、美味しいんじゃない?」
「うわー、そういう連中が国家予算を握ってるのか!?」
「それにさぁ……アイツら見てると結婚したくないなーって思うよ。
前例、前例ってすっごい保守的でつまんないのよぉ。しかも、東大、財務省ってぐらいでいばっちゃって、お山の大将になっちゃうヤツも多いしね。
東大なんてアタシが入ったぐらいだから大した大学じゃないっつーの。
あんなヤツらと結婚したら地獄だよ」
東大女に見下されたら、彼らも立つ瀬ないだろうなぁ、と、京香としてはむしろ同僚男性陣に同情してしまう。
ケイコはひどく達観していた。
一人でも定年まで十分にやっていける仕事についているから結婚にあせらなくてもいいのか、結婚にあせりたくないからそういう仕事についたのか……ケイコの真意は定かではないが、結婚願望があまりないようなのは確かなようだった。
最初のコメントを投稿しよう!