ことば

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「だいじょうぶ?」  え?  真後ろから、ふいに声をかけられ、ドクンと心臓が跳ねあがる。  若い女の子の心配そうな声だった。  恐る恐る振り向くと、子供がいた。  見た目では、10歳くらい……。たぶん、女の子。  暗くてはっきりと顔が見えない。大きなリュックサックを背負っていて、秋の遠足に行くような格好。冬の夜では寒そうだ。 「なんで死にたいの?」  かわいい声で、ど直球な質問を投げかけてきた。 「え、えーと」  答えに困る。  なんで、「死にたい」と呟いてしまうのだろう?    がんばってきたのに、思い描いていた大人になれなかったから?    誰も、わたしのことを、気にしてくれないから?    30代の後半なのに、まだ結婚できていないから、将来に絶望している?  何も言えずにいると、 「なるほどね」  いつのまにか、女の子が顔を近づけて、わたしの顔を覗きこんでいた。女の子の白い息が、わたしの首すじに届く。  何か分かったのか、大きく頷いた。 「あなた、本当は死にたくないんでしょ?」  違うと、口を開きかけて止めた。  ……何も言えない。  女の子をまじまじと見つめると、柔らかな笑みが返ってきた。     
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