エピローグ: 新しいことば

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エピローグ: 新しいことば

「……死にたい」  澄み切った青空に向かって、そう呟いてしまう。  社会に出て、  大人になって、  閉じ込めてしまった気持ち。  あの子との出会いで、大切なものを見つけた・・・・・・ような気がする。  でも、それは、まだはっきりとは見えない。  せっかく取り戻した想いは、小さな灯火のようだ。  テレビのニュースを見ていると、不安を駆りたてる情報に満ちている。芸能人の結婚のニュースを見ても、わたしの気持ちは沈んでしまう。  会社という組織にいると、会社が望む歯車になろうとしてしまう。  個性の大切さを忘れてしまう。  そんな世界に無防備でいると、取り戻した小さな灯火は、すぐに消えてしまう。 「……死にたい」  また言ってしまった。  染みついてしまった口癖はなかなか直らない。  小刻みに、頭を横に振る。  そして、わたしの心を癒やすように、優しい声で、こう言い加える。 「違う。  わたしは、  わたしらしく、生きたいの」
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