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星座を探そうと思ったけれど、そもそも星座を一つとして知らなかった。
コンビニにお酒を買いに行って、心底気だるそうに仕事をしているバイトのお兄さんを見ていたら、なんだか家に帰るのが嫌になってしまって、河原に足を向けた。草の上に寝転がるにはちょっと寒い、三月の夜更け。
名前だけ知ってるものはいくつかある。オリオン座とか、カシオペアとか、北斗七星とか。どんな形をしているのだろう。視界いっぱいの星のなかに、あるのだろうか。
適当に良く光っている星を繋げてみる。どんどん繋げていくうちに、何処が始まりか、わからなくなった。どんどんと先に行くと、もうどういう形を作ろうとしていたのかもあやふやになった。
そもそも、どんな形を作ろうとか、考えてなかったけど。
星を掴んで、掌で潰す。
どの星を掴んで、どの星が消えたのかわからないけれど、私の世界からは何処かの星が、一つ消えた。
そんなものだ。
そんなものなんだ。
たくさんあれば、どれが何で、実は消えてて、実はまだいてなんて、わかりはしない。わかるのは詳しい人だけで、数え切れない光の中のたった一つのことなんて、誰にもわからない。誰も見ようとはしない。
人が夜空を見上げて星という時、そこにあるのはきらきらとあちらこちらで瞬く、いくつもの星のこと。例え一つを指したって、それは立派な名前があって、有名がある。
私も、星になれたなら。
名も呼ばれず、誰にも気にされず。それでも、輝いているだけで満足だと言えたら、どれだけいいだろう。
どうして、誰かに名前を呼ばれたいなんて、思ってしまうんだ。誰かに必要とされたいなんて、思わないといけないんだ。
どうして私は、誰にも必要とされていないんだ。
誰かが私とすり替わったって、誰も困りはしない。違和感なんてすぐになくなる。変わりはいくらでもきいてしまう。求めているのは、私だけ。
こんなことを考えてしまう私は、生きることに向いていないのかもしれない。
家に帰って、お酒を飲んで眠って。そしたら、この気持ちを取り消せたらいいのに。
家に帰って、お酒を飲んで眠ったら、明日が今日になる。今日が昨日になって、この気持ちは私の体を重くする。
重くなった体が地面に埋まっていったところで、綺麗な花は咲きはしない。何も変わらず、草が生えるだけ。
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