桜と少女とプリン

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 スプーンを求めて、コンビニ袋を漁る。  ・・・・・・ない。・・・・・・あれ?  袋を覗き込んでみるけれど、やっぱり、ない。  ・・・・・・。  1個しか入れてくれなかったの~~!?  先ほどの店員への感謝を、即座にキャンセル。  1人でプリンを2個食べるって思われたのか・・・・・・。  ・・・・・・まぁ、合っているんだけど・・・・・・。  わたしが小さく唸っていると、口元に、プリンの欠片がのっかったスプーンがやってきた。  反射的に、パクリと食べる。  お い し い~~!!  全身が小刻みに揺れる。  なぜか、ちょっと涙が出た。  プリン100個分のおいしさ!  上京してきて、ずっと独りだったから、優しさに飢えてしまっていたのかもしれない。  あまりの嬉しさに目尻にたまった涙を誤魔化すように、目の前の少女に、独りで上京していることを語り始めてしまった。  なぜか、無性に話したくなっちゃったのだ。  少女は興味ありげに耳を傾けてくれている。  ここからずっと離れた場所にある故郷の名前を口にした。  まぁ、わからないよね……。  アルバイトの人たちとの飲み会とかで、故郷話の機会が何度かあった。  でも、わたしの故郷のことを詳しく知っている人は誰もいなかった。     
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