第一話

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それに気が付いたまっつんが、ちらりと伺うようにこちらを見る。 「大倉?」 「…ちょっとお花摘みに行って来るわ」 まっつんに呼び止められ、にへらと笑いながら誤魔化すようにみんなに言う。 「普通にトイレって言いなよ志衣奈ぁ!」 「お前はいいトコのお嬢様か!」 グループのみんながツッコみながら、あははと笑う。 「あー、なる!頑張れ!いってら!」 「後で感想聞かせてね!」 笑っているみんなの中で、まっつんと夏帆だけは私にアイコンタクトをしながら言った。 2人には私の意図がバレているらしい。 まっつんは意地悪く笑ってるし、夏帆はお母さんみたいに優しく笑ってる。 さすがだ。 「トイレに頑張れって!まっつんセクハラだな!」 「ばーか!違えし!」 「てかトイレの感想とか夏帆もセクハラじゃん!」 「というか変態?」 「安田が変態って知らなかったわ!」 「わ、私は変態じゃないよ!」 慌てる夏帆をからかって、楽しそうにケラケラと笑ってるグループのみんなを見ながら、私は教室を出た。 …もちろんトイレなんかじゃなくて、転校生が居る隣の3組に行く為に。
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