いつもの夢

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俺はいつも不可思議な夢を見る。夢と現の境目が分からないほどにリアルな夢だ。 見覚えのない広い部屋。見覚えのない高級な家具。 暗闇の中で、俺は息を殺すように辺りを窺う。 背中に流れる冷や汗が気持ち悪い。カラカラに乾く喉が、恐怖に怯える瞳が、ピンと張り詰めた空気が俺の中の理性や常識を剃り落として行く。 夢の中の俺は、それが夢だと認識しているのに、迫り来る狂気にジワジワと飲み込まれて行く。 声が聞こえて来た。高くも低くもない声は、うっとりと歌うような響きで、俺の頭の中に囁きかけてくる。 その声は最初、微かに聞こえる程度だった。毎日のように見る中で、徐々にはっきりと聞こえ、それが少しずつ近付いて来ているのに気づいたのはいつだろう。 ふわりと首筋に吐息がかかったような気がした。真後ろに何かの気配を感じて、俺は身を竦めた。ゾワリと這い上がる悪寒に意識を失いそうになった。 『僕の半分を君に上げる。だから君の半分を僕にちょうだい。ーーーーーーーーーーーーーーいいよね』 「・・・っ」 声にならない悲鳴を上げて、俺は布団から跳ね起きた。ドキドキと鳴り響く鼓動を押さえ、ハアハアと乱れる呼吸を必死になって整える。 辺りを窺い、そこが見慣れた部屋であることを認識すると、大きく安堵の息を吐き出した。 「良かった。・・・まだ生きてる」 大丈夫だ。そのことが嬉しくて笑いがこみ上げて来た。俯き、クククッと笑う俺を何かが包み込む。 「逃さないよ」 囁く声音に全身が凍り付いた。
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