御手洗源基はスポンサーが多すぎて身動きが取れない。

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 雨に濡れた午後。じめじめ淀んだ空気を颯爽と掻きわけながら、その男が向かった先は全国チェーンのファミリーレストラン。何時間も居座れ、平日は人が少なく、尚且つ普段着でも居心地の悪くない空間をチョイスした。 「監督、こちらです」  先に入っていた原作者の夜人(ないと)は監督に手を振ると、食べていたスパゲティを急いで平らげている。 「むごご……夢幻(むげん)監督、めっちゃやばいんですよ。今回、映画のスポンサーが20社も決まりました。一作目があんなに大ヒットしたおかげです。監督のおかげですよーん」 「そのことで、原作者の君に話があってな。ちょっといいかな」 「はいはーい。あ、ドリンクなに飲みます? あれ行っちゃいます? オレンジジュースとリンゴジュース混ぜてトロピカル紅茶」 「いいから、黙ってこの脚本を読め」  夢幻監督は思い詰めた顔で分厚い脚本をテーブルの上に出した。  夜人原作の映画『御手洗源基はヤンキーをやめられない上に学年首位のために女子からモテ過ぎて困る』が大ヒットし歴代二位の売上を叩きだしたのは、まだ26歳の若きレジェント、夢幻監督。ちなみに本名だ。  同じくカルボナーラを完食し、色んなジュースを混ぜ過ぎてよく分からない濁った色の飲み物を飲んでいる夜人(ないと)は、売れないシナリオライターだったが今回の映画のお陰で映画の小説を担当し印税でうはうは中だ。ちなみに本名だ。
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