罪と罰

2/7
前へ
/17ページ
次へ
 四日ほど、俺はホテルで寝泊まりをした。  トウヤにそう言われたからだ。  そして五日目の朝、  連絡を受けた俺はトウヤの自宅へと足を運んだ。    俺と同い年であるのに、トウヤは都内に一軒家を持っている。  地下室まで完備された二階建ての家だ。  俺の部屋からは、ミカの遺体が消えていた。  トウヤが運び出したのだろう。   「よう――  早かったな、ケンジ。  まあ、あがれよ」  リビングに通されて呆気に取られた。  整然とされた室内に、数えきれない人形が飾られていた。  大小様々な、オモチャというよりも、もっと精密な造りのドールとかいうやつだろうか。  一体で何十万するとか、百万を超える値段のもあると聞いた事も。  ケンジにこんな趣味があったとは知らなかった。  金持ちの道楽というのか――  総勢で幾らぐらいになるのだろうと、庶民の俺は場違いにも思ってしまう。  そんな俺に「こっちだ」と言い示して、トウヤは地下へと続く階段へ。  その地下室はまるで手術室のようだ。――いや、実際にそうなのかもしれない。  タイル張りの内装に、巨大なライトが中央、その下にやはり手術台のようなもの。  そして、その上に裸で横たわる誰か。  顔や体の至る所を包帯で覆っているが、女性であるのは知れた。  脇のトウヤを振り向くと、彼は頷き、そして言う。 「ミカだよ――  ちゃんと生きているミカだ」  到底信じられず、茫然と立ち尽くす。  それでも恐る恐るに近づき、その手を取った。  あたたかい――  生きて、いる。  確かにその彼女は、呼吸をし、脈打っている。 「意識が戻るまでもう数週間はかかる。  それでも、間違いなく――お前のミカだよ」  俺は耐えきれず、また膝を折ってしまう。  しかし今度のそれは、安堵の――感涙のそれだった。 「ただな、ケンジ――」  釘を刺すようなその鋭い声に、はっと顔を上げる。 「それはミカだけど……  完璧なミカじゃないんだ」 「ど、どういう……意味だ……?」 「何というべきか……  ――そうだな、そのミカは”半分”ってところなんだ」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加