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――そう、思っていた。
けれどミカが戻り、
また二人の生活が始まると、
否が応でもその事を痛感せざるを得なかった。
ミカはあの晩の、俺に殺された時の記憶を有していない。
階段から転落して頭を怪我した事にし、記憶の欠如はその所為と説明した。
だが、それ以上に、ミカ自身が余りに多くの事を忘れていた。
これまで培ってきた関係――
二人だけの秘密の話や、その大切な思い出さえをも。
いつかの映画で観たように、生き返ってからのミカは……ミカじゃない。
器は完璧にミカであっても、その中身がまるで違う。
それこそ、リビング・デッドだ。
ただ、映画のように「邪悪さ」を感じるというのではない。
それでも何気ない仕草や言葉尻、それらから受ける印象で判ってしまう。
これはミカではなく、ミカのカタチをした別のモノであると。
トウヤが言った事は本当だ。
ここに居るのはミカの、――その”半分”でしかない。
その”半分”しか、生き返っていないのだ。
そんな日々が一ヶ月、二か月と続く――
そうして、俺はまた過ちを犯してしまった。
取返しの付かない、その過ちを。
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