罪と罰

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 俺は無我夢中でトウヤの家へと飛び込んだ。  何事かと目を見開くその相手に、玄関先で縋りつく。 「まさか……まさかケンジ、お前……」  要領を得ない俺のただの嗚咽に、しかし敏いトウヤは勘付く。 「あれは……ミカじゃない……!  ミカじゃ……なかったんだっ!  耐えられなかった……俺にはそれが耐えられなかったんだぁっ!!  それで、また激しい口論になって……  俺は……また俺はっ……!  どうして……?  どうしてなんだトウヤ……!?    ――なんで完璧に生き返らせてくれなかったっ!?」 「……馬鹿野郎……!」  苦々しく吐き捨て、そして力任せに俺の身を奥へと引きずり込んだ。 「いいかっ、ケンジ!  死んだ人間が生き返るなんて事――あるワケ無いだろうがっ!」 「えっ……?」  虚を衝かれた俺は、言葉も涙を消し飛ぶ。 「だって、お前……だってケンジ、お前……  昔だって、あの時だってそうやって……生き返らせてくれたじゃないか……」 「あのハムスターの話か?    ……あのな、  俺は『生き返らせた』なんて一度も言っていない。  あれは、近所のペットショップを何件も回って、  同じ模様と大きさのを探し当てたに過ぎないんだよ」 「……そん……な……」 「同じなんだ。  今回も俺は、すり替えたに過ぎないのさ」 「すり……替えた……?」 「あれはミカじゃない。    ――妹のサヤカちゃんだよ」  その発言が耳へと到達したのに、脳へはあがってこない。  何を言ってるんだ、トウヤの奴は……?  あれが……サヤカだった……? 「今回の場合、全身整形を施したんだ。  背丈や骨格は元からかなり近い二人だ――  あとはミカの遺体を参考にし、姿形を完璧に似せたのさ」 「そんなバカな……  なんで……それでサヤカがミカになるんだよ……?」 「他でもない、  彼女が――サヤカちゃんがそう演じていたからだ」 「演じていた……?   な、なんで……そんな……」
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