1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ひとり……? だって、ケンジ……
俺はミカとサヤカの”二人”を殺して……」
「お前はそれを知らなかった。
そして、彼女がミカだと思えたからこそ、
――許せなかった。
そうだろう?」
「あ、ああ……」
「ならお前が殺したのはミカ”一人”さ。
何より、サヤカちゃんは全てを承知で……覚悟の上で事に臨んだ。
きっと、あの子だってそれで構わないさ」
「本当に……?」
「ああ、それでいいんだ。
人を真に罰するものってのは、神様でも刑法でもない。
ただ一つ、自らの心――
その良心の呵責によるものだけさ。
だからお前は、贖うんだ。自分のその心に依って。
なあ、ケンジ――
俺はお前が出所するまで、いつまでだって待ってやるよ。
もう……
俺の幼馴染はお前だけなんだぜ?
だから死ぬなんて、悲しい事を言わないでくれ。
罪をきっちり償って、
必ず再会を果たそう――」
トウヤが、目の前でそう優しく笑ってくれた。
俺はもう、涙で前が見えなかった。
俺がこの世界で誰よりも愛したミカの為――
そんな俺をここまでの覚悟で想ってくれたサヤカの為――
そして何より、
目の前の親友のその曇りない友情に報いる為にも――
決して自らを捨てたりせず、ただ只管に罪の許しを請おう。
これから先、そうやって自分の心に枷をして、償いの為だけに生きよう。
トウヤは魂など信じないと言うが、
それでも俺は天国にいる彼女たちへ――
心の底からの、この懺悔と祈りを捧げ続ける。
最初のコメントを投稿しよう!