口論の末

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 殺してしまった。  彼女をこの手で。  どうして、こんな事になってしまったのか……。  切欠なんてほんの些細なものだった。  けれども、気付けばこの両手で絞め殺していた。  愛していたのに……。  彼女を、誰よりも……。    眼前のベッドに裸で横たわる、最愛だった人。    虚空を見据える光のない瞳。  だらしのない半開きの口からは、もう声どころか息すら漏れない。  それはもう、ただの物でしかない。  あんなにも美しかった彼女の面、その肢体。  けれどもたった一瞬のその境を過ぎ去った時、  それはもう、色も形を消え失せた灰色の残骸となった。  奔放に笑いもしない。  真っすぐに怒りもしない。  煌めくような活力を表情や動作にすら乗せていた。  その様こそが堪らなく美しかった。  生命としての熱い輝き――、それを体現したような女性だった。  けれど、まるで動かなくなったそれは、もう最愛の彼女ではない。  ひたすらに空虚で、哀しい。  自分が殺めたという事実を置き去りにして、  それでも、彼女のその存在を永遠に喪ってしまったという事実のみが自身を苛む。  どれだけ罪深い事かは分かっていても、ただそれのみが心に宿った。  何で、こんな事になってしまったのか。  警察に通報しなければ。  自分がこの手で殺めたと、そう自首しなければ。  だが、体に力が入らない。  彼女を喪ったというその事実を受け入れたくなかった。  その時ぱっと、  ――光明が差した。  この事態を解決できるかもしれない人物の心当たりが浮かんだ。  まるで気狂い染みた、悪魔的な考えだった。  それでも俺は、その可能性に全てを懸ける事にした。  
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