悪魔との契約

4/6
前へ
/17ページ
次へ
 泣き腫らす俺に、トウヤは「心配するな、何とかしてやる」と言った。   動かなくなったそれを引き取ると言って、その場は俺を帰らせた。  その翌日だ。  トウヤは死んだ筈のハムスターを持ってきた。  それは生きて、動いていた。  どういう事なのか今でも解らない。  確かにあのハムスターは死んでいた。  しかし、一晩トウヤの元に預けただけで”生き返った”のだ。  お陰で俺は、母への恐怖から解放された。  何度もその事を尋ねてみたが、トウヤは冗談めかして話をはぐらすばかり。  それでも納得し切れず、しつこく聞き出そうとした。  その時――  いつも剽軽で気易かった親友が、その皮を脱ぎ捨てた。  背筋が凍りそうなこの眼を初めて見せた。  だから俺は、こうしてトウヤに頼った。  狂気の発想であるのは百も承知している。  それでも……。 「なあ、トウヤ……頼むから来て欲しい。  冗談でも何でもない。  俺にはもう……お前しかいないんだよ……」   抑えようとしても、声が涙で滲でしまう。  それがどんな手段だっていい。  ミカを……  俺の最愛の人を……  ――取り戻したい。  何分、いや何十分だったかもしれない。  その恐ろしいまでの眼で俺を見据えていたトウヤが、  徐に「わかった」と頷いた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加