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泣き腫らす俺に、トウヤは「心配するな、何とかしてやる」と言った。
動かなくなったそれを引き取ると言って、その場は俺を帰らせた。
その翌日だ。
トウヤは死んだ筈のハムスターを持ってきた。
それは生きて、動いていた。
どういう事なのか今でも解らない。
確かにあのハムスターは死んでいた。
しかし、一晩トウヤの元に預けただけで”生き返った”のだ。
お陰で俺は、母への恐怖から解放された。
何度もその事を尋ねてみたが、トウヤは冗談めかして話をはぐらすばかり。
それでも納得し切れず、しつこく聞き出そうとした。
その時――
いつも剽軽で気易かった親友が、その皮を脱ぎ捨てた。
背筋が凍りそうなこの眼を初めて見せた。
だから俺は、こうしてトウヤに頼った。
狂気の発想であるのは百も承知している。
それでも……。
「なあ、トウヤ……頼むから来て欲しい。
冗談でも何でもない。
俺にはもう……お前しかいないんだよ……」
抑えようとしても、声が涙で滲でしまう。
それがどんな手段だっていい。
ミカを……
俺の最愛の人を……
――取り戻したい。
何分、いや何十分だったかもしれない。
その恐ろしいまでの眼で俺を見据えていたトウヤが、
徐に「わかった」と頷いた。
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