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裸のまま横たわっている”それ”を見て、流石のトウヤも絶句していた。
何度か俺の顔と、そのままの形で放置されているベッドの上を往復させてから、
トウヤは呻くように喉を鳴らし口元を隠した。
しかし、切り替え素早く――
まるで慣れた手つきでミカ”だった”ものを検分する。
「首元に絞殺痕だな……。
それも、紐状の細いのを用いたんじゃない跡だ。
ケンジ……お前の手を見せてくれるか……?」
職業柄なのか、警察でもないだろうにそんな事を言う。
「そんな、……探偵みたいな真似しなくていい。
俺だよ。
俺が殺したんだ……。
俺がこの手で……ミカの首を絞め殺したんだよっ……!!」
内からの激情に呑まれるように、声が勝手に荒んでいく。
「……どうして、こんな事を?」
「わからないんだっ……!
はじめは、ちょっとした口論でしかなかったと思う……。
でも、気付いたら……
気が付いたら……もう、こんな事になっていて……」
「………………」
「たっ、助けてくれよトウヤ……!
何とかしてくれ……
あ……あの時みたいにっ……!!」
「何を……言ってるんだお前……?」
「とぼけないでくれっ!
で、できるんじゃないのか……?
他でもないお前なら……できるんじゃないのか?
ミカを”生き返らせる”事が――お前ならできるんだろうっ!?」
愕然とした、見開いた眼のトウヤ。
しかし、その反応は否定とも肯定ともとれる。
そして、その眼を窄めた。
あのこわいくらいに無機質な、冷徹な光を孕んだ瞳だった。
俺はただ項垂れて、トウヤの返事を待った。
余りにも長い沈黙。
顔を上げてトウヤを窺えば――
彼は俺ではなくベッドの上のミカの遺体を凝っと眺めている。
まさに矯めつ眇めつという様相で、
その周囲をぐるりと回ったり、
時折、その遺体の状態を確かめるかのように手足を動かせている。――まるで人形にそうするみたいに。
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