6人が本棚に入れています
本棚に追加
AM7:30ーー目覚まし時計がけたたましく鳴る。桜井和葉(さくらい かずは)は布団を頭からかぶっていたが、布団からだるそうに手をニョキッと出し、時計のボタンを押す。時計の音が鳴り止むと、再び手を布団に引っ込め、ぐうぐうと眠り始める。
母が、部屋のドアをバンと開ける。
「何やってるの、和葉!遅刻するわよ。ほら、起きなさい!」
母の大きな声が、部屋中に響く。
「ん~、あと5分……」
いかにも眠たそうな声で、絞り出すように和葉は言う。
「何言ってるの、ほら、今日入学式でしょ!!遅刻なんてしたら恥ずかしいわよ!」
そう言って母は、和葉の布団をバッとめくりあげる。
「……何するのよ」
「起きるのよ、ほら!」
母はそう言うと、学校の制服をクローゼットから出して、布団の上に投げて置く。
和葉はだるそうに起き上がると、目をこすりながらパジャマを脱ぎ、制服へと着替える。
「あとちゃんと顔も洗って!ご飯も食べるのよ」
「えー、朝ご飯食べてたら遅刻しちゃうじゃない」
まだ若干眠たそうに和葉は言う。
「じゃあ少しでもいいから。何か食べてから行きなさい。わかったわね?」
「はーい」
けだるそうに和葉は言う。
(あ、そう言えば秀とも中学一緒なんだっけ)
和葉は、閃いたように思い出す。顔が一瞬パァっと明るくなる。
(クラスも一緒だったらいいな……)
和葉には、自慢の幼馴染みの、児島秀一(こじま しゅういち)がいる。容姿端麗で、勉強もスポーツもできるパーフェクト男子だ。
いつからかはわからないし、和葉本人も自覚していないのだが、淡い恋心を抱いていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!