貴方へ

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AM7:30ーー目覚まし時計がけたたましく鳴る。桜井和葉(さくらい かずは)は布団を頭からかぶっていたが、布団からだるそうに手をニョキッと出し、時計のボタンを押す。時計の音が鳴り止むと、再び手を布団に引っ込め、ぐうぐうと眠り始める。 母が、部屋のドアをバンと開ける。 「何やってるの、和葉!遅刻するわよ。ほら、起きなさい!」 母の大きな声が、部屋中に響く。 「ん~、あと5分……」 いかにも眠たそうな声で、絞り出すように和葉は言う。 「何言ってるの、ほら、今日入学式でしょ!!遅刻なんてしたら恥ずかしいわよ!」 そう言って母は、和葉の布団をバッとめくりあげる。 「……何するのよ」 「起きるのよ、ほら!」 母はそう言うと、学校の制服をクローゼットから出して、布団の上に投げて置く。 和葉はだるそうに起き上がると、目をこすりながらパジャマを脱ぎ、制服へと着替える。 「あとちゃんと顔も洗って!ご飯も食べるのよ」 「えー、朝ご飯食べてたら遅刻しちゃうじゃない」 まだ若干眠たそうに和葉は言う。 「じゃあ少しでもいいから。何か食べてから行きなさい。わかったわね?」 「はーい」 けだるそうに和葉は言う。 (あ、そう言えば秀とも中学一緒なんだっけ) 和葉は、閃いたように思い出す。顔が一瞬パァっと明るくなる。 (クラスも一緒だったらいいな……) 和葉には、自慢の幼馴染みの、児島秀一(こじま しゅういち)がいる。容姿端麗で、勉強もスポーツもできるパーフェクト男子だ。 いつからかはわからないし、和葉本人も自覚していないのだが、淡い恋心を抱いていたのだ。
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