交番ガールの章 ~壁~

2/18
前へ
/539ページ
次へ
 よく見るとバイクはホンダCB1300P。夫もいつも乗っている白バイだった。 「ちわーす。トイレお借りします」  サッサと速足で交番に入って来る男は、白バイ隊員だった。 そのまま悠子は書類に視線を落とした。 「あ、はーい。どうぞ」  悠子は書類を書きながら言う。    白バイ隊員は途中でトイレに行きたくなったり、食事をする際は通りがかりの所轄署や交番内でトイレを借りたり、所轄署の食堂で食事をする事もある。    勿論、警察協力店を利用する事も多い。  悠子はふと、視線を見上げた。 (あれ?さっきの池村君じゃなかったっけ)    懐かしい見覚えがある顔だったと、思い出す。間もなくトイレから先程の隊員が出て来た。 「なぁんだ。かわいい婦人警官がここにいるって聞いたから来たのに、堀井だったのか」  その白バイ隊員は少し肩を落とす。悠子はその言いぐさにムッとした。
/539ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1059人が本棚に入れています
本棚に追加