ランチを君と

2/6
前へ
/913ページ
次へ
「あれ? 今日は外?」 お昼ギリギリに外回りから帰って来た広木くんが、小さいバッグを手に席を立った私を見て訊いてきた。 今日、お弁当じゃないことは朝のうちに初音には話してあったけど、広木くんは直行だったからいなかったっけ。 広木さんと2人でお弁当だなんてドキドキです! って初音は浮かれていたけどね。 彼氏がいてもイケメンと2人きりのランチはドキドキするってことだろう。 「うん、兄とランチなの。」 「なんだ、そうなのか。じゃあ、僕も外で食べるかな。」 「え? お弁当は?」 「別に残業の合い間に食べてもいいしね。お兄さんと3人でランチしても構わない?」 そう言いながら一緒にエレベーターに乗ろうとする広木くんの顔をまじまじと見てしまった。 いやいや、あなた。この前、飲み会に迎えに来た兄にちょっと会釈しただけよね? 話もしたことがないのに、兄妹の食事に合流する? 広木くんって、そんな図々しいタイプじゃないと思ったけど。 第一、そんなことをしたら兄が傷つく。まるで私が2人だけになるのを避けたみたいで。 「ごめん。今日はちょっと親戚のごたごたの話で。ほら、式にどこまで呼ぶかってことでちょっとあってね。身内の恥みたいなものだから、2人で話したいの。」 スラスラと嘘を並べる私を、広木くんの鋭い目が見つめる。 何だか見透かされているようで、早くエレベーターに誰か乗って来てくださいと祈ってしまった。 「ああ、うちも姉貴の時にちょっと揉めたよ。そういうことなら邪魔しちゃ悪いな。松本さんと2人で弁当食べるよ。」 「うん、そうして。初音も楽しみにしてたから。」 4階で4人の社員が乗ってくると、その中に綾瀬ちゃんの姿を見つけた私はニッコリ微笑んだ。 「綾瀬ちゃんも外で食べるの?」 「いえ、私は地下街にお弁当を買いに行くんです。お2人は一緒にランチですか?」 「いや、今日は別々。白川さんはお兄さんとランチだって。いつもは僕と一緒に手作り弁当なんだけどね。」 「え?! もしかして白川さん、広木さんのお弁当も作って来てるんですか?」 なんで、そうなる? 私が社外の人と結婚間近だってことは、結婚式の写真撮影を引き受けてくれた綾瀬ちゃんが一番よく知っているのに。
/913ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3660人が本棚に入れています
本棚に追加