動画撮影 - side S

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「お帰りなさい。お疲れ様。」 家に帰れば、玄関で出迎えてくれる美月の笑顔。疲れも吹き飛ぶとは、このことだ。 結婚したら毎日こんな幸せが味わえるのかと思うと、子どもみたいにワクワクする。 「ただいま。来てくれて嬉しいよ。」 美月も俺の言葉に嬉しそうにニコッと微笑んだ。本当に癒される。 「ご飯出来てるけど、お風呂を先にする?」 俺の脱いだスーツをハンガーに掛けながら訊いてくる姿は、もう奥さんそのもので、ついつい頬が緩んでしまった。 今日は外回りが多かったから先にシャワーを済ませると、部屋着とトランクスもきちんと用意してくれていた。 テーブルの上には2人分の夕食が並べられていて、どれも旨そうだ。 「先に食べてなかったんだ?」 「うん。私もそんなに早く来られなかったから、一緒に食べようと思ってお風呂だけ先にいただいてたの。」 「一人で食べるより一緒の方が旨く感じるもんな。」 2人で食卓を囲むのは、ささやかなようでいて大きな幸せだ。 食べながら八神さんの動画の話をしたら、美月も驚いていた。 「うわっ、怖いね。それって犯罪でしょ? 通報しないの?」 「手塚先輩としては大ごとにしたくないだろう。」 「動画ってそんなに上手く撮れるものなのかな? 相手に気付かれないように撮るなんて至難の技じゃない?」 「美月には無理だろうな。感じ始めたら、もうそんな余裕ないだろ?」 美月じゃなくても、行為に没頭していたら撮影なんて無理だ。 つまり、八神さんは最初から手塚先輩を脅すつもりで、セックスの最中も冷静さを失わなかったというわけか。 「ちゃんと映ってるか確かめながら撮らないと、スマホを手に持ってるだけじゃ天井が映るだけだよね。あれ? でも、男の人の顔を映すことは出来ても、アソコまで映すのは不可能じゃない? 手や足が邪魔して。」 「確かにそうだな。騎乗位なら可能か? 後でやってみるか。」 俺の呟きに、美月がパッと顔を上げた。 「”やってみるか”って、また再現? 先輩が撮られちゃったのは事実なんだから、確かめるまでもないじゃない。」 「それはそうだけど騎乗位なら、主導権は八神さんにあったと言えるだろ? これで先輩が離婚なんてことになったら、巻き込んだ俺も責任を感じるよ。」 「主導権がどっちだろうと浮気は浮気。離婚は当然の報いよ。」 美月が冷たく言い放った。
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