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「──…っ…」
グレイは微かに顔をしかめその疼きを堪える。
こう言うことを口にする度にこの痛みに襲われるのかと小さな焦りさえ感じてしまう。
グレイの言葉一つ、仕草一つに敏感に反応するルナにグレイ自身も微かに困っていた。
「いちいちこの程度で喜ぶな…」
「……だって…っ」
目を擦るルナを見つめ、グレイの口から小さなため息が零れる。
こう毎回、苦しいのはどう避ければいい──
嬉しくて泣きそうなルナの顔を手で包むとグレイは言った。
「お前は面白くて厭きない──…だから好きだ」
「───…」
滲む涙を拭う動きと共に、ルナの胸の疼きがピタリと止まっていた。
「……っ…」
ルナは目を見開くとまたからかわれたと自覚して怒りを露にする。
グレイは治まった痛みに少しホッとしながら怒るルナから目を逸らしていた。
ルナの疼きを止めるにはこの方法しか浮かばない。
グレイは目を泳がせながら上を仰ぐ。
“グレイ様、少しはルナ様に優しく…”
「………」
“モーリス…それは当分無理な話だ……”
二人の様子が伝わったのか、モーリスの念が脳裏に響いた。
グレイは胸の中で返しながら思わずふっと柔らかな笑みを浮かべる。そして観念したように怒るルナを急に抱き締めて機嫌を取っていた。
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