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その退屈との無縁を闇の主は手に入れていた……
「まだ掛かるか」
「ちょっ…今、着替えの途中って」
言ってもこの横暴な魔物には通じはしない。
ルナは着替えの途中に扉をいきなり開けたグレイに腹を立てながら、慌ててドレスを身に纏っていた。
なんだろう…
モタモタとドレスを着ながらルナは微かに焦る。
太ったのだろうか?
前に着たよりも窮屈になっている。
どうせ太るなら一番欲しい所にだけ付いて欲しい。
そう思いながらルナはグレイに背を向けて密かに冷や汗を浮かべていた。
「どうした? 早くしないか」
「わ、わかってるから出て行ってよ!」
グレイは後ろを向いて叫んだルナを背後から覗き込む。
そしてふっと笑ったグレイの息が首に掛かった。
「大人になれば少しは女らしい躰になると期待したが……」
「……っ…」
「当てが外れたな……」
「なっ…」
何の当てが外れて笑ったかは大体わかる。グレイの言った言葉に怒りを露にしながらもルナはふと、殴り掛かりそうな動きを止めた。
「大人?……ってなに?」
「大人だ…」
だからそれが何か聞いてるのに…
不満を見せたルナを見つめているとグレイは静かにルナを見つめ返す。
「今日はお前の20歳の誕生日だ──」
パチンと鳴らして指差す先で、壁にあったカレンダーがヒラヒラと風も無いのに游いでいる。
ルナはえっと目を見開いた。
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