1268人が本棚に入れています
本棚に追加
ん? と振り返ると、しわが増え少し痩せた神官のローナが、不安そうにこちらを見ていた。
「ああ、ご無沙汰しておりますローナさん」
笑顔で身体ごとそちらへ向き、ローナのそばまで近づく。
ローナはほっと安堵した様子で、何年も会っていなかったから、人違いかと、と微笑した。
「それにしても、こうして改めて見ると、変わらないわね。お元気そうでよかったわ」
「大人になってませんか?」
自分の顔を撫で、ローナと会ったのは十代だったんだがと苦笑する。
「ええ、すっかり落ち着いた雰囲気になっていますね。ですので、少し悩んでしまったの」
「ああ、髪色が少し暗くなっていますしね」
加齢による白髪が、元の銀色を消してしまったローナは、それでも姿勢はいいままだった。
少し小さくなっている気もするが、痩せてしまったからそう見えるだけかもしれない。
「今日はお祈りですか?」
「ええ、闇の精霊へお礼をしに参りました」
柔らかい笑みを口元に乗せ、ローナはしかし悩んでいる素振りを見せた。
「何か、ご心配事が?」
「あら、まあごめんなさい。少し孫のことが気にかかっていまして。本教会にいますの、よくここにも来てくれる、とてもいい子なの。ただ、最近少し元気がなくて。クリスさんは上級魔術士でしたわよね?」
最初のコメントを投稿しよう!