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「いえ、実は降格して、今は中級なんですよ」
「まあ、でもすぐに戻れますでしょう、気を落としては駄目よ?」
「はい、ありがとうございます。魔術士に関わる悩みでしたか?」
ローナは少し下を向き、それから胸の前で手を組み俺のことをまっすぐ見てきた。
「どなたか、魔力制御を教えられる、子供好きの方に心当たりはございませんか?」
え、ジルくらいしか知らないけど。
話を聞いてみると、5歳の子供に制御を教えていたのがローナの孫で、その子供の家が取り潰しとなり、孫にその子を預けたまま戻って来ないそうだ。つまり、捨てたのだ。
孤児院へ預けたその日に魔力が暴走しそうになり、現在ローナの孫がつきっきりで面倒を見ていて、疲れ切っているらしい。
他の神官も見てくれるのだが、不安になるのか魔力が揺らいでしまい、一時間と預けられない状況だそうだ。
「それは、困りますね」
「ええ。神官としての務めもありますし、孫はまだ若いので扱いに苦労していて。このままですと、孫が参ってしまう気がするの」
神官として捨てるわけにもいかないし、頼りの孤児院にも預けられない。
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