第14章 これだって恋の話

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彼女は余韻に浸るように目を閉じて全身を息づかせ、次の男が乗ってきたのも気づかない風だった。 その様子に少し誇らしい気分になる。もしかしたら、ちょっとは彼女を満足させてあげられたのかな。 しかし、それにしても。俺は何とも言えない気持ちで考える。こんな成り行きで童貞を喪失して。しかも、前の男たちに高められた結果でたまさか偶然俺のところでってタイミングだったとはいえ。…初めてのセックスで、女の子にいかれてしまった…。 こんなんが最初で俺、今後普通のやり方で満足できるかな。誰と何しても物足りなく感じちゃったらどうしよう、と一抹の不安がよぎった。 それと、終わったあと、彼女とちょっとでも話す時間はあるかな、となどと場に不釣り合いな思いに胸をときめかせたのも事実なのだった。 結果から言うと、俺はその日彼女と話す機会は持てなかった。 最後の十一人目まで何とか持ちこたえた彼女はふうっと意識を失い、そこで辛くもストップがかかった。二回目はなし。 「まぁなあ、人数が多すぎたかなぁ…」 「今度もっと少人数でお願いしよう。楽しみが増えたな」 彼女が気がついたらお風呂に入れてあげよう、とお湯を入れて支度を始める者や意識が戻ったら何か飲ませてあげなきゃと言って近くのコンビニに走る者が続出し、皆彼女の世話を焼きたくてたまらなくてそわそわしている。これじゃあ彼女の目が覚めてもそうそう近づけないかも。高校生の非会員の分際でイベントに参加したことが露見するのも穏やかじゃないし。問題が起きないうちに帰ろう、と思いつつ最後に未練がましく彼女の寝顔を見るためにそっと寝室を覗いた。 彼女は綺麗なすべすべの顔で眠っていた。毛布を丁寧に掛けられたその下の身体は見て取れない。でも俺は忘れない、君の柔らかい温かい身体。そんなことを考えながらそっと指先で前髪をかき上げた。彼女は微かにため息をついて身じろぎした。 俺の中に不意に小さな衝動が生まれた。上体をかがめ、顔を近づけて囁く。 「…ごめんね、『夜』さん」 何を謝ったのか自分でもよくわからない。これから自分がすることなのか。それともこんな状況につけ込んで、大勢の男たちと一緒になって彼女を貪ったことに対しての罪悪感なのか。どっちにしろ君はきっと俺のことを記憶しないだろう。俺はそう考えながら顔を更に寄せた。 でも、俺は絶対に君をまた見つける。
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