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念のため体調には留意して。もし些細なことでも何か変化が見られたらすぐに相談してね。手首の痣の写真撮っとく?」
これは加賀谷さんに。彼は重い表情で頷いた。
「撮る。何が必要になるかわからないし」
そうしてまた数日後経過を見せに来るようわたしに言い渡してから先生は黒服に送られて帰っていった。
加賀谷さんはわたしを促すように立ち上がり、部屋を見回した。
「さ、行くぞ。もうだいぶ遅くなったけど。明日お前会社行くのか?出来たら休んだ方がいいと思うけど」
「そんな急に休めないよ」
わたしはそう答えつつも首を傾げた。行くって、どこに?
「仕方ないな、今からじゃあんまり睡眠取れないぞ。まぁ、どうしてもってんなら朝は会社まで送ってやるけど。…じゃあ、ひと通り荷物纏めろ。服なんか必要なら買ってやるけど、数日分は念のため持っていけ。すぐに買い物行く暇ないかもしれないから。貴重品はそのまま置いとくなよ。後で黒服に全部まとめさせるから」
「え、どうするのこれから」
浴室の方で服を身につけてるわたしに背を向けて彼は平静な波のない声で当たり前の如く答えた。
「俺んちに行く。てか、お前はそのまま住むんだ、そこに。この部屋にはもう戻る必要ない。自分でどうしても荷物まとめたかったら数日後でよければ俺がついてきてやる。…でも、もうここには住めないよ、お前は。ああやってあいつらがここを探り当てたってことはもう安全な場所とは言えない。尤も連中はもう二度と来られないけど。…今もう四人全員確保してある。これから徹底的に絞り上げて、お前に対して変な気を起こしたことをこれ以上ないくらい本気で後悔させてやるからな」
「え。…もう全員捕まえたの」
わたしはちょっと引く。多分、彼らは家に着くか着かないかくらいだったんじゃないだろうか。あまりの電光石火ぶりに心底驚愕しただろうな。
加賀谷さんは素っ気なく肩を窄めた。
「お前の写真を拡散されたりする前に速攻動く必要があったから。連中の携帯も念のため全員分取り上げたし、自宅と職場のパソコンも全部これから捜索するよ。しかし家族はびっくりしただろうな、訳のわからない男たちを引き連れて蒼ざめた顔で旦那が憔悴して帰宅したんだろうから…。こんな深夜に、心臓に悪いことだな。家の者には罪はない訳だから気の毒としか言いようがないけど」
彼は服を身につけ終わったわたしを支えてそっと促した。
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