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「さ、数日分の荷物纏めろ。手伝えることがあったら何でも言えよ。…ずっと付いててやりたいけど、俺の家にお前を送ったらちょっとひと仕事しに出なきゃならないから。朝にはちゃんと戻るよ。お前を会社まで送っていかないとな」
その日は取るものも取りあえず、何を考える間もなく加賀谷さんの家にそのまま連れられて行った。
大きな通りを一本入ったところにある閑静な環境に威容を誇るマンション。さほど高層ではなく、十階程度の建物が中庭を囲むようにいくつか並んでいる。エレベーターで上がって部屋に通され、おお、さすが広いな、とこんな時なのに内心で感嘆する。
「シャワー浴びて、俺のベッドで寝てろ。てか当たり前だけど、ベッド一つしかないから当分お前が使え。部屋着持ってきたか?なければ、俺のTシャツとかでよければ貸すから。ちゃんと洗濯してあるし」
「こんな時間なのに、出かけるの」
手早く着替えを出して渡され、それを抱えて見上げる。彼は何とも言えない色を湛えた目でわたしを見下ろした。
「朝が来る前に最低限の決着つけておきたいんだ。今のところお前を撮った写真はあいつのスマホの二枚だけしか発見されてなくて、何処かに送信した痕跡はないって報告はあったけど。やっぱり自分の目で確認したいし、PCは俺が直にチェックしないと気が済まないんだよ。取り急ぎそれだけは確かめて、あとは四人の連中をどう料理するかだな。そこそこのポジションの人間だから、あんまり長い時間身柄を拘束しておくのもまずいし。手早く的確に一発で、根元からばっきり折ってやらないと。二度と変な気起こしたり、こっちに破れかぶれでかかってこようって思わせたりしないように」
わたしの目の中に怪訝な色を見たのか少し口調を和らげた。
「夜里だけのためじゃない。これはクラブ全体の重大な分かれ道でもあるんだ。女の子が抜けようとするたびこんなことを仕掛けてくる奴らが出てくるならあんな場所はもう続けていけないよ。そのことを周知してしっかり他の会員にも見せしめておく必要がある。辞めた後でも女の子は守られてる、手を出したり安全を脅かしたらただじゃ済まないってとこを見せつけないと…。だからあいつらは他の会員がぞっとするくらいの目をこれから見る羽目になるよ。心と身体、家庭と社会的地位。全部無傷では済まさない。…多分抜け殻みたいになってしばらく立ち直れないだろうな」
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