後でご褒美差し上げますよ

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赤くなった顔がようやく落ち着いたのは今さっきだ。 「酒井のスーツ、よくお似合いよ」 湊さんに美しすぎる笑顔でそう囁かれ、何も返せなくなった。 酒井さんは湊さんのことを鈍感だと言っていたけれど、本当にそうなんだろうか。 私には俄かに信じられない。 「はぁ……」 晴れ晴れとしたこの空に似つかわしくない主のため息が聞こえた。 「何をそんなに神妙な顔をしているんですか」 後部座席の一条朔也は、何やら難しい顔をして流れる景色を眺めている。 「いや……」 「男同士ということに偏見でも?」 「そんなことはどうでもいい」 ……どうでもいいって。 「そうですか。では、何を考え込んでいるんです?」 「なぁ、酒井さんって湊のことが好きなのか?」 「今更、何を言っているんです。態度を見れば一目瞭然ではないですか。 でもそれは過去のことで、今は私の恋人です」 「本当に過去のことだろうか。だって、湊はあんなに可愛いんだぞ!? 湊からお前に乗り換えるなんて、考えられない」 「嫌なことを言う人ですね。 私に言わせれば湊さんがあなたを選んでいるのだって不思議ですよ。 酒井さんは凄く優しいし、ああ見えて意外に男らしい部分もあるんです。ずっと傍にいたら湊さんだって……」 「ダメだ!」 一条朔也は運転席のシートに両手をかけると、腰を浮かせて前のめりになりながら話してくる。 「澤村!それは拙いぞ!」 「ちょっと!きちんと座っていてください」 「秘書を交代する。お前、湊の秘書をやれ。酒井さんを俺の秘書にする」 「……嫌です」 「どうして。湊の秘書だぞ?普通、喜ぶところだろう」 「あなた、酒井さんに手を出すでしょう」 「大丈夫。俺は女が好きだ」 「副社長、言葉の響きが最低です」
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