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大学受験を終えて、あとは卒業式を待つばかり。みんながみんな受験に成功したわけではないし、手放しでパーフェクトに幸せを共有できるほど完璧なクラスではないけれど、とはいえ一時期の張り詰めから解放されて、みな思い思いに緩んだ高校生活の最後を過ごしている。
そんな、日常の一日。ありふれた、「卒業まで限られた日」。僕は気付いた。
「好きなんだ」と。
なにも、この最後の最後に気付かなくてもいいじゃないか。高校生活の最後に、告白する決意を固めるなんて、ありふれた話であってしかし、だからこそ気持ちはよくわかる。なにせこれから別々の道へ進むことになるんだ。
上手くいかなくとも悔いを残さないため、上手くいくことを祈って最後のチャンスにかけたため、理由はそれは人さまざまだろうけれど、とはいえきっと、諦めた人も心を決めた人も、それは悩みきっていよいよという時に臨んでいるんだろう。それはそうだ。卒業するのはこれから三日後、日付までは知らなかったとしても三年前の入学から決まっていたことだ。そして好きになる、好きと気付くきっかけはやまほどあった。修学旅行、体育祭、学園祭も委員会も部活も、青春を謳歌するに不足なんてなかった。
そんな中で。僕だけが唐突に、わざわざ迷惑にもこのタイミングで、君のことを好きだと気付いてしまったんだ。
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