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人生の転機なんてものはいつだって唐突で、一瞬の出来事が人生をめちゃくちゃにしたり、はたまた逆に、一発逆転ホームランのようになにもかもひっくり返して幸せになったりする。それだって僕は、決して純粋な偶然とは思わない。ホームランを打ったバッターは、きっと炎天下の中で大汗流し、手の豆を潰して練習してきたんだろうし、突然の事故で死ぬ人の中には、日頃から赤信号を無視したり、そんな風にちょっとくらいとルールを破ってきた人もいただろう。その小さな可能性の積み重ねの、結果が一つ出た、そういう偶然と必然のごちゃまぜな転機は、つまずく前の小石のようにそこらじゅうに転がっている。
ただ、僕が今話したいことというのは、そういうありふれたびっくりのお話ではなくて、ゆっくりじっくり熟成させた、出荷の日の決まったチーズのような転機のお話。
卒業の日は、あと三日に迫っていた。
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