異世界ですよっ!異世界っっ!

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淳は現状を理解できず、あるいは理解したくない一心でか、ぼんやり風景を眺めていた。 ふと腕時計を見ると、七時五十分を示していた。 家を出たのは四十分、つまりこの世界に来たのも同時刻なので、淳は十分間もの間ぼんやりとしていたことになる。 とはいえ、このままでは埒が明かない。 彼が趣味で読み漁っていたライトノベルやネット小説でも、現在の淳と似たような展開は山ほどある。 食傷気味と文句を言いつつも、つい気になって読んでしまうのが彼の悪いところだ。 ものは試しにと、王道パターンの一つを試してみる。 「す、ステータスオープン?」 言ってみると結構恥ずかしい。周りに誰もいなくて良かった。 空を見上げれば二匹のドラゴンがじゃれあっているのだが、それは別だ。 だが淳の前に半透明な液晶画面が出てくることはない。 恥を偲んで唱えた呪文は無駄に終わってしまった。
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