神様会議

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「それでは第569741回の神様会議を行います」 雲の上に設けられた会議場に各国の神様が集められた。数年に一回の神様会議だ。地球の未来を決める大切な話し合いである。 神々の王である全知全能の神ゼウスは全員を見渡せる位置で会議の行く末を見守っていた。 ゼウスは話し合いに参加しないが、最後の決定権はゼウスにある。 僕はランク的に下のほうなのであまり意見を言う事はできない。だから、だいたい話し合いを聞いているだけだ。 「えー……まず、昨夜全世界で行われたイベント、“夜空への願い事を”の願い事の結果を発表したいと思います」 進行役の神様が空に結果を表示させる。 その結果を見て、ざわめきが起こった。 「こりゃまた綺麗に2つ揃ったものだね」 僕の前に居る上司が呟く。 確かにこの2つの願いが揃う事は珍しい。 その2つとは、世界の滅亡と世界の平和……だ。 「会議に値しない願いは省いてあります。僅かに滅亡派が多いですが……どなたか意見はありますか?」 「だったら滅亡させちまえばいいのさ」 北欧神話のロキが気だるそうな面持ちで吐き捨てる。 「そんな簡単なものではないでしょう」 七福神の一、恵比寿が反論のために身を乗り出した。 「今まで見守ってきた人類の歴史が終わってしまうのですよ?」 「その人類の歴史とやらに、何の価値がある?」 「価値の有無じゃないでしょうに」 「好き勝手に地球を占領しやがって……さっさと滅んじまえばいいのさ」 神様の間でも滅亡派と平和派に分かれて意見が纏まらない。ゼウスも、こればかりはすぐに決断を下す事ができないようであった。 だから、誰かが提案した。 「人間の行動に任せると言うのはどうでしょうか?」 「って、いったい何をどう任せるってんだ?」 ロキが提案に噛み付く。 「ですから、特定の人間に試練を与えるのです。その試練を与えられた人間が、どういう人間に育つかで決めるのはどうでしょう?勿論、決定権はゼウス様にあるので、参考程度にと思いますが……」 ゼウスは腕を組み、「ふーむ」と声を出す。そして「それ、良いじゃなーい」と提案者を指差した。「ナイスアイデアだよ、君」 提案者は照れ笑いを浮かべる。 「でも、誰に試練を与えるのですか?」 誰かの質問に他の神様が答える。
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