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「これから産まれる子供で良いんじゃないの?その子にとっておきの試練を与えてさー、どんな子に育つか観察しちゃおうよー」
神様の世界では時間の流れが早いので、人間の一年は十二時間程度だ。つまり、一時間で一ヶ月ということになる。だから、観察といってもそれほど時間のかかるものでもない。必要であればさらに時間を進める事もできる。しかし、巻き戻しは出来ない。
それから神様はその人間にどんな試練を与えるか決める話し合いを始めた。
環境の悪い土地に誕生させ、酷い親に育てさせ、悪い奴等がいる学校や会社に行かせて、運の悪い事を何度も経験させ、願いは叶わず、失敗の繰り返し、絶望のドン底に叩き落とす。それでもその人間が世界を愛せるなら、世界の平和を実現させよう。
会議はその流れで決定し、終わった。
そして、第一の条件「環境の悪い土地」を選び、酷いを親を選別して子供を身籠らせた。
皆でその子が産まれるのを待ち、人間界を覗く。
しかし、「あっ」と誰かが言葉を発する。「いやいや、それは無いって」
皆が何事かと、子を身籠った母親を見ると、なんと母親は病院へ行き、堕胎する手続きを行っていた。
神様達が困った顔をする。これじゃあ、意味がない。
それを見ていたロキが口を開く。
「ほれ見ろ」
そして、鼻で笑った。
「でも、俺達が手を下さなくても、人類なんてそのうち滅ぶんじゃないか?」
進行役は頭をかきながらゼウスの方を見る。「じゃあ、えっと……」
「滅亡でいいんじゃなーい?しかも、じわりじわり減らしちゃおうよ」
こうして、会議は終了した。
それにしても人間とは不思議な生き物だ。自然の摂理を無視して生きている。
いつしか神様に近付くんじゃなかろうか?
そう考えると、とても恐ろしい。
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