車内にて

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「………彩斗(アヤト)、お前の実家はブラジルにでもあるのか?」 「……………は?」 突然聞こえた変な質問に、眉間にシワがよる。 向けた顔に、何言ってんだ?って出たかもしれない。 けど、真咲は俺を見ていない。 真っ直ぐ前を見て、返事を待ってる。 「あー…、何、俺ブラジル人っぽい?」 ふんと笑うように言うと 「お前は『実家に行ってくる』と言って消えた。 待てど暮らせど帰ってこないし、携帯も繋がらない、アパートに行けば引き払った後だった。」 淡々と言葉を並べていく。 …………。 「何ヶ月前の話してんだよ。女々しい奴だな。 お前はモテるんだから、いちいち別れた男の事なんてどーでもいいだろ」 「…へぇ、俺は捨てられたのか…」 " 捨てられた " ねぇ。 「つぅか、俺は思い出話とかしない主義なんで。 席移動すっから通せよ」 強行突破しようと席を立つ。 しかし、 真咲は足を退けない。 「通してもらえませんか?」 イラつきながら聞く。 ぶつかった視線は火花が飛びそうだ。 「で?誰が勝手に消えていいって言った?」
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