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確かに「実家に帰る」を理由にした。
そしたら暫くは時間が稼げると思ったから。
直ぐに探される事はないって。
本当なら「別れる」とか「さようなら」とか言った方が良かったんだ。
だけど、
どうしても言いたくなかった。
離れる事は耐えられる。
でも。
その言葉だけは、嫌だと。
「ぁー、、悪かったよ。けど、もう随分前の話じゃん!
お前ももういい歳なんだから、結婚しなきゃだしなぁ。
あっ、もうしちゃってるとか?」
努めて明るく言う。
こんなにおちゃらけないと、あの時あんなに傷つけた自分が可哀想だ。
「………」
ギロっと睨んだ真咲はさっきと同じようにジャケットの裾を引っ張り、今度は強く俺を席に戻した。
「お前が俺に言いたいのはそれだけか?」
………………。
「………ほ、ほかに何があるんだよ。ってゆーか、言いたい事も話す事もないし……」
強引に座らされて、ふて腐れたように視線を外した。
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