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あの娘と王子の結婚式は、すぐに執り行われた。
国をあげて盛大に祝い、舞踏会と同じく国中の人間が集ったようだ。
変わりに私は、真っ黒な喪服に身を包んだ。
悪人らしく、結婚を悲しみ、純粋な悪になった。
私の可愛い愛娘達は、結婚式に出席させた。
二人の娘達は、私と対象で結婚式に出られることをとても喜んでいた。今まで、罵ってきた女に媚を売ることも平気でしていた。
産まれてから一度も醜いと思ったことがない、とても可愛い娘達だったが、この時ばかりは美しさの欠片も感じなかった。
そんな娘達でも、結婚式で出会った貴族出身の二人の兄弟に、二人とも気に入られた。
貴族といっても、あまり位の高い出身では無いらしいが、片田舎で暮らすよりは良いと言いきかせ、なかば、無理矢理、結婚させた。
舞踏会で取り付けた縁談は、心もとないものだったのでこれで良かったと胸を撫で下ろす。
それに結婚相手くらい、自分で見つけた方が良いに決まっている。
私も疲れたし、もう、どうでもよくなった。
娘達が結婚すれば、私の役目は終わり。
可愛い愛娘達に裕福な生活をもう一度、させることが出来た。
可愛い愛娘達に使用人の真似事をさせずにすんだ。
その犠牲になったのがあの娘だっただけ。
誰かが、私のことを間違っていると罵ろうとも、あの犠牲は娘達へのまぎれもない愛。
そして、あの娘が私にした仕打ちは、まぎれもない侮辱。
優しさや思いやりをあの娘がどれだけ持っていようと、無自覚に私を憐れみ私を見下した。
優しく、思いやりがあるからこそ私は、見下された。
あの娘の父親がしたように。
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