五章

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私は、ただ美しく愛されたかった。 社交界でも、二人の愛娘達にも、愛した二人の夫にも。 誰よりも愛して欲しかっただけなのよ。 それをあの女とその娘が邪魔をした。 私を憐れむ目を向けながら、ただ、そこに存在するだけで。 それこそが、あの娘の罪。 純粋じゃない汚れた灰色。 炭になれなかった汚い燃えカスなのよ。 私は、この国から出ていく。 あの娘のせいで。 あの娘は、きっと気付く。 私が国を出たことを。 そして、自分のせいで私が国を出たことも気付くでしょう。 その時に、罪の意識に苛まれればいい。 白色についた小さな灰の染みを一生、気にしていれば良いのよ。 優しさがあるゆえに、その分、長く罪を意識すれば、それだけで私の心は満たされる。 それが、あの母娘と私の対極の悪。 私はあの娘に灰をかぶらせたのだ。
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