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祐基の肩に凭れたまま、林檎をかじる彼の腕に腕を絡める。そして私から手を繋いだ。
しっかりと指を絡めて。
下から見上げるみたいに、ゆっくりと林檎を齧る祐基を見つめる、見つめ続ける。
シャリッという音が、少しだけ大きくなった気がする。私も林檎を齧る。祐基の音に重ねるようにタイミングを合わせた。
シャリッ
シャリッ
その音に祐基はようやく私と視線を合わせてくれる。
林檎を持ったまま見つめ合ううちに、祐基の瞳に優しい穏やかな光が戻ってきている気がした。
祐さん、ゆっくり行こう。私たちだけのペースでゆっくり。
視線を逸らさず、そんな想いも、ごめんなさいも、ありがとうも、私の心の中のすべてを籠めて言った。
「祐さん、愛してる」
祐基の頬が少しずつ染まった。それを見て私だって恥ずかしくなってくる。そんな私に気づいたのか、家に帰って初めて祐基が口を開いてくれた。
「僕も、一生愛しています」
神父様には申し訳ないけれど、私たちはようやく本当の愛の誓いを言葉で交わせたんだと思う。
病めるときも
健やかなるときも
祐基を愛し続けることを
祐基の側にいることを
祐基に愛され続けることを
誓います。
〈fin〉
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