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「私の体重が重いのは体重計のせいじゃないかって疑心暗鬼に駆られてた頃に……
で、二つ目の体重計でも同じだったの!」
「二つとも壊れてるんじゃ?」
「そう思うなら、今日帰りに家電屋寄っていこうよ。目の前で体重計ってみせるわ!」
「……そこまでは興味ないんだけどねぇ」
やる気のない勝子を引きずって私は帰途、家電屋に寄った。体重はやはり半減していた。
「あぁ、なんて素晴らしいのかしら! 体重が軽い世界って、こんなに素敵なのね!」
以前と同じ景色を見ているはずなのに、目に映るもの全てが煌めいて見える。
空に浮かぶ月、街灯、飲み屋の看板。そして居酒屋前の『本日レディースデー!』の文字。
「体重が少なくなったんだから、食べてもいいよね? 食べなきゃ倒れちゃうもんね?」
自分に言い訳をしながら、暖簾をくぐった。
不思議な事に、どれだけ暴飲暴食を繰り返しても、体重はほとんど変わらなかった。
以前であれば、数kgは覚悟するところ、僅か1kg増加など、ほんの些細な量であった。
これに味を占めた私は、元の体重に近づけるべく、食べに食べたのだった。
「これで前と大体同じくらいになったわね」
体重計の上で、満足げに呟く。
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