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「へえ? って何なの、自分なら稼げると言いたげね、一つ穴しかない男の分際で『へえ?』と上から目線で言える額を稼ぐっての」
やだなあ
僕を凡人の女将と同じレベルで考えないでくれない、笑っちゃうから
「僕は身を売る商売をしたことないので稼ぎ高の見当はつきません。けれど」
扇子を官能的な唇にあて、白眼を充血させた女将に顔を寄せた。ピタリ、気強そうな女将の眼と僕の綺麗な瞳をしっかり合わせ
1・2・3
秒より長く間をとり、ゆっくり目尻を和らげる
「女将よりはいけるかなあ」
ぷつぷつぷつ
女将の額に青筋が浮く。うわあ、凄い。太い血管だねえ
健康的な血管はいいよ、感心感心
「そうまで仰るなら勝負致しましょう
規定の額以上での売買は規約違反で廃業ですよ。勝負は明日、まあ、アクツ堂さんは商売慣れしておられないようですし、負けが込んでも、いえ、私ごときが助言することではありませんね、では失礼」
自信満々だねぇ、女将。でも僕、一晩も必要ないかな
くるりと身を翻した僕は、佐野屋の旦那様の胸に手をやんわりとあてた
「ねえ旦那様、明日、僕を抱いてくれない? 大広間で」
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