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アクツに連絡した。僕に抱かれてから不機嫌で、口も聞いてくれなかったけど
「ユキ! テメェ何考えてやがる」
ベルトの前にチャカを差し、右手に握るのはバール。上下黒のスーツを着たアクツは無造作に、バールでテーブルを殴るから。バキバキ、音を立ててテーブルだった板が床に散らばった
駄目だよ、アクツ
物は大切にしなきゃ、罰があたるからね
「今すぐ佐野屋に断りをいれろ。俺がお前を抱く」
「ダメ。観覧席にアクツがいないと安心できないでしょう? アクツは30分毎に客を入れ替えて、終わったら僕を抱いてよ。ね?」
なに、僕の言葉は信用できないと言いたげな眼は。失礼だよアクツ
仕方ないなあ
立ち上がった僕はアクツの二の腕の辺りを触る。スーツの上からでも、僕の掌を跳ね返す頑丈な筋肉。僕はコレが、好き
「佐野屋の旦那様は仕事」
彼は魅せ方を知ってる人。美しい僕を綺麗に抱いて、観客を満足させてくれるだろう。でも、それだけじゃまだ足りない
何度でも、旦那様に抱かれる僕を観たい。そう思わせるには
「アクツを見るよ。旦那様に抱かれながら、アクツの視線を飲み込んで僕は濡れる」
舞台装置を完璧にしなきゃ、ダーメ。飽きられちゃうから
僕とアクツの関係を勘ぐり、僕を抱く旦那様とアクツの視線の攻防に胸をときめかせ、旦那様に抱かれる僕の心情を観客に、自由に解釈して貰う。それこそが僕の狙い
「分かった、ユキのしたいようにしろ」
ありがとう。アクツと旦那様の協力のお陰で、舞台は整った。後は明日、舞台を観客に披露するだけ
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