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今夜の僕は着物。肌襦袢、長襦袢、着物をレンガ色で統一して、細帯で腰骨のあたりをしゅっと締め、片ばさみにしておく
うーん、美男子
鏡に映る僕に、惚れ惚れしてしまう
「ヨシキさん、時間です」
はいはい
ほんの少し目を伏せて、哀愁を漂わす僕。色っぽい? 可哀想? どっちにも見える感じ?
しずしずと、廊下を歩く僕の胸は期待で、わっくわく
障子の向こうでは挨拶が始まってる
「これからこの部屋にお見えになる方はアクツ堂の店長、ヨシキです。彼は素人でこの世界の住人ではありません
明日以降、店で見かけても買える商品と勘違いなさいませんよう、お願い申し上げます」
いい! アクツ
苦汁と嫉妬と威嚇、全てを混ぜ込んだ完璧な挨拶に僕、興奮しちゃう
アクツが動く。障子の向こう側は薄明かりとなり、すーっと開かれていく障子。美しい僕の登場に
ホゥ
感嘆の溜め息が漏れる。僕、いま、スーッゴイ気分いい!
「ここにおいでなさい、ヨシキさん」
とんとん
敷き布団を指先で叩く旦那様。流石です。呼び方が上品で、でも否とは言わせない迫力をまとう彼のそばへ
俯き加減に近付く
一瞬、足を止め、ライトを背にして立つアクツを見る。僕に表情を見られたくないのだろうけど、いいね。完璧な演出だよアクツ
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