ごっこ遊び

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へえ? この安っぽい単純なデザインには見覚えがある。焦げた肌、ムキムキの筋肉、金色の髪。和菓子職人の旦那様の食指を動かす、金髪魚の指を飾ってるのと同じ、デザイナーの品だね 今日のアクツ堂は表に顔を出す男衆が少ない。 エサは僕。それがアクツの用意した罠だとすれば、楽しみ方を変えなきゃ、損。だよねぇ 「ごめんね、僕、ここの雇われ店長さん。売り物じゃ、ないんだよね」 僕、ちょっと疲れ気味なの、ポーズ テーブルに肘をついて、手首を折り、指の背を合わせ、背中を少しエビ反り気味にした。気怠げで、色気を含んだ微笑つき 濃く長い睫毛を瞬いて、薄く開いた唇をキュッと閉じて、ゆっくり横へ広げていく 「厭らしいな。昨夜の情事を思い出して笑っただろう」 「やだな。そんな笑い方、してた? 僕」 うん、いい反応 僕としては昨夜、誰かと交わったのだと男に思わせたい。男の脳裏に浮かぶ僕のパトロンと、ね 反っていた背中を真っ直ぐに伸ばした僕は 手を頬にあて、うなじへ滑らせ、頷いたような、否定したような、微妙さを意識して顎を揺らし首を傾げて、クスッと笑った さあ、食いつけ。 雇われとはいえ僕は店長。違うけど、僕がアクツの情夫ならアクツ堂で自由に動ける。キミが取り返したい金髪魚に近付く最短距離の鍵は、この僕が、握ってるよ
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