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「荒野に咲く一輪の薔薇のように美しいキミに一目惚れしたのに、残念だな」
へえ? そう
キミは野ざらしの空き地に咲く野草そのものだよ。エレガントさもなければ、強烈な個性もない
普段なら相手にしないタイプの男にとりあえず、微笑んでおいた
「ところで、ここは会員制の店?」
「いいえ。アクツ堂の魚でしたら店先で販売しておりますよ。ご案内しましょう」
さっと立ち上がった僕は壁に目隠しされた陳列棚へ、ウキウキと、男を案内した
もちろん、陳列棚に鮮魚を飾っているわけではない。そんなコトをしても、場所を取るだけだし、生物なだけに排泄もするので手がかかり面倒だ
前、後ろ、横、股開き、四つん這い。計5枚の写真を陳列棚に用意し、身長、体重、スリーサイズまで書き込み、商品を選びやすくしている
「売却済み・・・・・・が、多いね」
微笑ましい光景だ
金髪魚の写真を目にして青ざめた男の眼は怒りを宿し、拳は震え、噛みしめた唇からは今にも、唸り声が響きそう
かわいそう
知ってる人が商品になっていて、男だからする側だと思ってたのにそうでもなさそうで、恥ずかしい写真を飾られてるだけでもショックなのに、誰かの相手をさせられてるんだもんね
腹立つよね
憎いよね
何としても取り返したいよね?
怒りを隠せない男がかわいそうすぎて僕、スッゴく楽しい。
胸がキュンキュンしちゃう!
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